やぎみす地蔵縁起

 昔、寺の近くに母親をなくした子供が住んでいた。新しい母親が来たが、先妻の四歳になる子供には食事もろくに食べさせなかったと言う。そんなある日、この四歳の子供に焼き飯を持たせて、「石の地蔵さんに食べさせてこい!!お地蔵さんが食ったらお前にもくわせてやる!!」といわれた。

 子供はお地蔵さんに焼き飯を供え、小さな手を合わせて、一生懸命にお祈りし、泣きすがりながらお地蔵さんの口もとに焼き飯を持っていったところその真心が通じて食べてくれたという。

 このことを知った母親は今までの自分の愛情のない冷たい心を悔い改め、我が子同様に育ててくれたという。

 

「焼き飯」という言葉が訛って「やぎみす」となったとされています


やぎみす地蔵 添え書

 地蔵さまは、お釈迦さまが入滅された後、弥勒菩薩さまが世に出るまで無佛の五十六億七千万年の間お釈迦さまの依頼をうけて、六道の衆生を教化する菩薩であるとした。

 したがって、大地の徳の擬人化である。そして、お釈迦さまは六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)にわたって摂化し、衆生を救済して善道に向かわしめると地蔵十王経にある。

 また、六地蔵は延命地蔵・宝処地蔵・宝珠地蔵・特地地蔵・宝印地蔵・堅固地蔵で、また、賽の河原の幼童の救護者とされ、六道輪廻思想と結びついて、路傍に立てられ道の神、旅の神とし、道六道(道祖神)的性格を持つようになった。

 地蔵信仰は奈良時代からで、平安時代は貴族社会に、室町時代になって、庶民の間へ、江戸時代では延命地蔵・子安地蔵・夜泣き地蔵・夜廻り地蔵などの形で、信仰が庶民に浸透していった。